キラップとは?フィプロニルの注意点は?フェニルピラゾール殺虫剤を解説
有効成分と適用害虫
フェニルピラゾール系農薬は、主にエチプロールとフィプロニルの二種類があります。
害虫の神経伝達物質を阻害し、作物への加害を阻止する役割があります。
主な適用害虫としては、ウンカ類やカメムシ、イネドロオイムシの防除に使用されます。
特にエチプロールの特徴としては、非常に少ない薬量で吸汁性、咀嚼性害虫に効果を示すことが挙げられます。また、従来の殺虫剤とは異なる作用機作を示すなどの特長があり、人畜・鳥類などに対しても安全性が高く、原体、製剤とも普通物に分類され使いやすい薬剤とされています。
エチプロールは育苗箱、本田粒剤、液剤散布での使用、フィプロニルは育苗箱のみでの使用になります。
代表的な商品
フェニルピラゾール系農薬の代表的な商品は、
- エチプロールを有効成分とする『キラップ』『ゲットワン』
- フィプロニルを有効成分とする『プリンス』
この二種類が大きく挙げられます。
このうちで、無人ヘリやドローンといった空中散布用になっている農薬は、『キラップ』を中心とするエチプロール系農薬です。
毒性は「普通物」に分類されます。
*フィプロニルを有効成分とする農薬の中には、まだ『無人ヘリ散布用』である農薬はありません。
空中散布の状況
一般財団法人残留農薬研究所の研究によれば、平成28年度の無人ヘリコプター防除(水稲)における農薬の使用面積は、
- エチプロール:170(千ha)
となっており、現在散布されている殺虫剤系農薬の第2位を占めています。
空中散布可能な商品
2019年1月現在、散布可能な農薬には以下の薬品があります。
- キラップ フロアブル
- キラップジョーカー フロアブル
両種類ともバイエルクロップサイエンス株式会社、北興工業化学株式会社より発売されています。
キラップフロアブル
成分:エチプロール 10.0%
新規化合物エチプロールのフロアブル剤です。特に斑点米カメムシに優れた効果を示します。
その他の特徴
- 稲のカメムシ類、とくに最近問題となっているアカヒゲホソミドリカスミカメ、アカスジカスミカメに対して優れた効果を示します。また、ウンカ類にも高い活性を示します。
- だいず、えだまめのカメムシ類に対し高い効果があります。
- りんごの最重要害虫であるモモシンクイガ、キンモンホソガ、アブラムシ類に優れた効果を示します。
- 茶の新芽、新葉を加害するチャノキイロアザミウマに優れた効果を示します。
- 従来の茎葉散布殺虫剤とは作用性が異なりますので、他剤に感受性の低下した害虫にも効果が期待できます。
* バイエルクロップサイエンス株式会社 『キラップフロアブル』より
キラップジョーカー フロアブル
成分:エチプロール 3.0%、シラフルオフェン 7.0%
成分として、エチプロールの他にピレスロイド系であるシラフルオフェンが加えられています。
エチプロール・シラフルオフェン、2つの殺虫成分の配合により、各種のカメムシに高い殺虫効果を示す。斑点米カメムシに即効性があり、併せて長い残効が期待できます。
水稲の中・後期害虫であるツマグロヨコバイ、ウンカ類、コブノメイガ、イナゴ類などにも優れた効果を示します。
薬品使用上の備考
とりわけフィプロニルは、ゴキブリやアリの駆除にも使用されています。これは、遅効性である特徴を利用して、死に至るまでに巣に帰る事ができるからである。ゴキブリやアリの場合、フィプロニルを摂取して巣に戻った個体の糞や死骸を他の個体が摂食することで、巣全体へ効果が広がる効果が見込めます。
また、ネオニコチノイド系殺虫剤とともに、フィプロニルはミツバチの大量死の原因として疑われており、2013年にEUでは全禁止の方向が進められている点で、今後の動向に注意が必要です。
適用害虫および使用方法
キラップフロアブル
作物名 | 適用害虫名 | 希釈倍数 | 散布液量(ml/10a) | 使用時期 | 本剤の使用回数 | エチプロールを含む農薬の総使用回数 |
---|---|---|---|---|---|---|
稲 | ウンカ類カメムシ類 | 8~16倍 | 800 | 収穫14日前まで | 2回以内 | 2回以内(移植時までの処理は1回以内) |
イネドロオイムシ | 16倍 | 800 | ||||
だいず | カメムシ類 | 16倍 | 800 | 収穫7日前まで | 2回以内 | 2回以内 |
キラップジョーカー フロアブル
作物名 | 適用害虫名 | 希釈倍数 | 散布液量(10a) | 使用時期 | 本剤の総使用回数 |
---|---|---|---|---|---|
稲 | ウンカ類 カメムシ類 ツマグロヨコバイ フタオビコヤガ コブノメイガ | 8倍 | 800ml | 収穫14日前まで | 2回以内 |
参考
産業用無人航空機用農薬:一般社団法人 農林水産航空協会
農薬の大気経由による飛散リスク評価・管理対策最終報告書:一般財団法人残留農薬研究
空中散布における無人航空機利用技術指導指針:農林水産航空協会
主な殺虫成分と適用害虫:農業恊同組合新聞
キラップフロアブル:バイエルクロップサイエンス株式会社
キラップジョーカーフロアブル:北興化学工業株式会社