アミスターとは?ストロビルリン系殺菌剤を解説
有効成分と適用病害虫
ストロビルリン系の農薬は、主な有効成分としてアゾキストロビン、オリサストロビン、メトミノストロビンが挙げられます。
作用性として病原菌細胞におけるミトコンドリアまで働きかけ、呼吸を阻害します。
例えば、アゾキストロビンはカビから農作物を守るために使われることが多く、食品添加物の場合は防カビ剤として使用されます。
主な適用病害虫としては、 いもち病、紋枯病、ごま葉枯病菌に有効です。
予防効果・治療効果を両者兼ね備えており、水での浸透移行性も示します。
代表的な商品
ストロビルリン系の農薬の代表的な商品は、以下の通りです。
- アゾキストロビンを有効成分とする『アミスター』
- オリサストロビンを有効成分とする『嵐』
- メトミノストロビンを有効成分とする『オリブライト』『イモチエース』
このうち、空中散布可能な商品としては、『アミスター』『オリブライト』が挙げられます。
空中散布の状況
一般財団法人残留農薬研究所の研究によれば、平成28年度の無人ヘリコプター防除(水稲)における農薬の使用面積は、
- アゾキシストロビン:95(千ha)
となっており、これは全体の第6位を占めています。
* オリブライトに関しては2千ha以下と、主流にはなっていません。
空中散布可能な商品:アゾキストロビン系
2019年1月現在、空中散布可能な農薬には以下の薬品があります。
- アミスターエイト
- アミスタートレボンSE
- アミスターアクタラSC
- (アミスター20フロアブル)
* アミスター20フロアブルは、大豆の紫斑病への効果に特化している薬剤です。
アミスターエイト
成分:アゾキシストロビン 8.0%
いもち病・紋枯病・ごま葉枯病菌にも有効で、米の品質に影響を及ぼす稲こうじ病などにも効果を示します。またいもち病に対して、胞子の飛散を抑え、高い二次感染阻止効果が得られます。適期幅が広く持続性に富むという特徴もあります。
取扱を行っているメーカーは、恊友アグリになります。
アミスタートレボンSE
成分:エトフェンプロックス 10.0%、アゾキシストロビン 8.0%
いもち病・紋枯病・ごま葉枯病菌にも他に有効なアゾキシストロビンと、カメムシ類他に有効なエトフェンプロックスの混合剤で、これらの同時防除剤として最適な薬剤です。
特に、出穂期から穂揃い期までの散布において、穂いもち病およびカメムシ類の防除のみならず、紋枯病に対しても高い効果を発揮します。
エトフェンプロックスの薬効についてはこちらをご覧下さい。
なお、エトフェンプロックスを混合することでミツバチに対する毒性を有しています。事前に養蜂業者と次の安全対策について十分協議の上実施してください。
取扱メーカーは、協友アグリ、シンジェンタジャパン、三井化学アグロとなっています。
アミスターアクタラSC
成分:チアメトキサム 6.5%、アゾキシストロビン 8.0%
無人ヘリコプター散布の防除で数多くの実績があるアミスターと、野菜・畑作などの殺虫剤として高い評価を得ているネオニコチノイド系農薬、アクタラ(有効成分チアメトキサム)を混合した空中散布用の殺虫殺菌剤です。
これら二つの有効成分が合わさり、水田の重要病害「いもち病」、「紋枯病」、斑点米の原因となる「カメムシ類」に対して優れた防除効果を発揮します。
「アミスター アクタラ SC」は、大別して3つの特徴を持っています。
- 二つの殺虫殺菌成分の配合
アミスターがイネ体内の隅々まで浸透し、植物病原菌の生存に必要な「呼吸」を阻害。病原菌増殖サイクル全てに効果を発揮します。
アクタラが害虫への食毒作用を発揮。吸汁を阻害しカメムシ類を餓死に至らせます。
- 有効成分が 2成分あるため、減農薬栽培にも対応
- 散布適期が長く、防除体系が組みやすい
とりわけ「紋枯病」に対して従来の薬剤よりも散布適期が幅広く、病害虫の同時防除が可能です。
薬品使用上の備考
もともとストロビルリン系殺菌剤は、食用キノコから発見された天然生理活性物質(ストロビルリンA)に由来しています。
水稲へは一成分で、いもち病、紋枯病、ごま葉枯病菌に有効で、さらに稲こうじ病や穂枯れ症を起こすアルタナリア菌、すじ葉枯病菌にも効果があります。
水稲以外では、主に果樹におけるうどんこ病、べと病、黒星病、黒斑病、炭疽病といった様々な病原菌に対して効果があり、作物に侵入する前の病原菌に効果を発揮する「予防効果」、既に侵入した病原菌に対しても効果を発揮する「治療効果」を両立しているため非常に使い勝手が良い薬剤と言えます。
適用病害及び使用方法
*『産業用無人航空機用農薬』一般社団法人 農林水産航空協会ページより抜粋
アミスターエイト
作物名 | 適用病害名 | 希釈倍数 | 散布液量(ml/10a) | 使用時期 | 本剤のみを使用する場合の使用回数 | アゾキシストロビンを含む農薬の総使用回数 |
---|---|---|---|---|---|---|
稲 | いもち病 紋枯病 |
8倍 | 800 | 収穫14日前まで | 3回 | 4回以内(育苗箱散布は1回以内、本田では3回以内) |
アミスタートレボンSE
作物名 | 適用病害虫名 | 希釈倍数 | 散布液量(ml/10a) | 使用時期 | 本剤のみを使用する場合の使用回数 |
---|---|---|---|---|---|
稲 | いもち病 紋枯病 カメムシ類 ウンカ類 ツマグロヨコバイ | 8倍 | 800 | 収穫 14日前まで | 3回以内 |
だいず | 紫斑病 カメムシ類 マメシンクイガ | 8倍 | 800 | 収穫 21日前まで | 2回以内 |
アミスターアクタラSC
作物名 | 適用病害虫名 | 希釈倍数 | 散布液量(ml/10a) | 使用時期 | 本剤の使用回数 |
---|---|---|---|---|---|
稲 | いもち病 紋枯病 カメムシ類 ウンカ類 | 8倍 | 800ml | 収穫14日前まで | 2回以内 |
参考
産業用無人航空機用農薬:一般社団法人 農林水産航空協会
図解でよくわかる農薬のきほん:㈱誠文堂新光社
主な水稲殺菌成分の特性一覧:農業恊同組合新聞
ストロビルリン系殺菌剤とは:農研機構
協友アミスターエイト:協友アグリ株式会社
アミスタートレボンSE 協友アグリ株式会社