プリグロックスとは?パラコート系除草剤について
プリグロックスとは?
プリグロックスは成分にパラコートを含む除草剤で、世界120カ国以上で約40年にわたり使用されてきた接触速効型の非選択性除草剤です。
プリグロックス系製品の中でも最も普及している『プリグロックスL』は、有効成分としてジクワットを7.0%、パラコートを5.0%含んでいます。植物の葉や茎にかかることで効力を発揮し、散布後1~3日で素早く効果が現れ植物を枯らします。そのため効率よく作業することが可能で、残雪などによって耕起が遅れてもスピーディーに除草できます。
成分に関しては「非選択性」に分類され、どんな植物でも枯らしてしまう効果があります。便利である一方、作物も枯らしてしまうリスクがあるため、プリグロックスは作物が生えている圃場には基本的に使用しません。
非選択性除草剤は、触れたものを全てを無差別に枯れさせてしまうという効果から、農耕地ではない畦畔といった場所に生える雑草を全て枯らせるために使用するのが一般的です。
特長と使われ方
一年生から多年生雑草まで幅広い雑草に優れた効果を発揮します。土壌に残留しないため水田の畦畔や、水稲を耕起する前、小麦やその他畑作の土地にも使用可能です。空き地や駐車場の雑草などにも使われます。
プリグロックスは葉茎の薬剤がかかった部分だけ枯らし、根は枯らさないという点が大きな特長です。
根まで枯らす除草剤を畦畔に多用すると、畦畔の地盤が弱まって、作業がしづらくなる可能性があります。ラウンドアップやサンフーロンといった他の非選択性除草剤は、雑草の根まで枯らしてしまうため畦畔に使用するには比較的不向きと言えます。
一方でプリグロックスは、畦や傾斜地でも土の崩れを心配せずに使用できるのが特徴です。特に、代かき時の湛水作業後や梅雨時には土壌流亡が発生する恐れがあるため、耕起・代かき前~梅雨入り前まではプリグロックスで畦畔を除草するのがおすすめです。
水田での使われ方
水田での水稲栽培では、特に畦へのプリグロックス散布が効果的であると言えます。
水稲栽培ではカメムシやツマグロヨコバイといった農家の頭を悩ませる害虫が非常に多くいます。そのため本田の雑草防除に気を取られがちですが、害虫は本田周辺で育ってから本田に侵入するため、そちらの防除も欠かせません。害虫のすみかになりがちな畦畔の雑草をこまめに除草することで、収量に影響を与える害虫を予防できます。
また、プリグロックスのメリットとしては、作物に飛散しても液剤がかかった部分しか枯れない(移行性が低い)ため作物近くでも安心して使えることが挙げられます。枯れにくく頑固なスギナに対しても効果的です。
空中散布の可否
今現在、プリグロックスやパラコート系の薬剤で、農林水産航空協会より空中散布が許可されている薬剤はありません。
プリグロックスだけでなく、ラウンドアップやサンフーロンもそうですが、非選択性薬剤は作物や周辺環境への薬害があり得るため、基本的に空中散布が許可されていません。畦畔などに使用することが多いプリグロックスですが、使用する際には手動で散布を行いましょう。
パラコートについて
有効成分
プリグロックスの有効成分であるパラコートはビピリジウム系に属する非選択性であり、1種類の除草剤ですべての雑草を枯らすことが出来ます。そのため、生えている雑草の種類に合わせて多くの種類の除草剤を混ぜたり、それぞれの雑草に合わせた農薬を散布する必要がありません。雑草に占領されていた土地を一気に枯らせることにより、手間無く農耕に再度利用することができます。
葉だけを枯らして、木や根は枯らさない点、即効性は強いが持続性はない点、散布後はすぐに土壌に固着して不活性化するため、すぐに作物を植えることが出来る点、安価で経済的であるという点から、広く普及してきました。
また、プリグロックスLと同じ内容物で「マイゼット」と呼ばれてきた薬剤もあります。これは後にプリグロックスLに名前が統一されました。
パラコートの毒性に関する議論
しかしながら、プリグロックスの主成分であるパラコートを含む製剤は毒物指定を受けています。そして、パラコート中毒による中毒死者も数多く出ています。
ここまで話したように、パラコートは主に除草剤として使用されていますが、皮膚や気道、消化器官から体内に吸収することで中毒症状を引き起こします。特にパラコートを誤って飲んでしまうと、そのまま死に至るケースも数多くあります。
また、皮膚や気道から取り込まれるため、マスクや等の対策を行わない状態で散布するとパラコート中毒になるリスクがあります。
このような危険性から、EUでは2007年にパラコート系除草剤の使用が禁止されています。日本でも除草剤としてのパラコートの規制が年々厳しくなっています。
現在、日本では普通に販売されているパラコート系除草剤。日本では幅広く普及している薬剤ですが、その安全な使用に関してはさらなる議論が必要です。
参考
産業用無人航空機用農薬:一般社団法人 農林水産航空協会
Syngenta:プリグロックスL
GREENJAPAN:プリグロックスL
Medical note:パラコート中毒
一般社団法人日本中毒学会:その8パラコート中毒