カスミン・バリダシンとは?抗生物質系殺菌剤を解説

有効成分と適用病害菌

抗生物質系殺菌剤は、バリダマイシン、カスガマイシン、ポリオキシンといった主な有効成分が挙げられます。バリダシン・カスミンといった製品が有名です。

効果がある病害菌は、主にいもち病・もみ枯細菌病です。

微生物の産生する抗生物質を植物病害防除を目的に開発された剤です。一般に選択性が強く施用薬量は少なく、原体に薬臭がないため、収穫物への残臭のおそれがありません。作物と土壌の残効も短いものが多い特徴があります。

また、効果の出方としては病気の予防というよりは、治療的な効果を示します。耐性菌の出現が確認されており、効果が効きにくい植物も多いので注意が必要です。

代表的な商品

抗生物質系殺菌剤の代表的な商品は以下の通りです。
両者はどちらも空中散布可能な農薬が用意されています。

  • バリダマイシンを有効成分とする『バリダシン』
  • カスガマイシンを有効成分とする『カスミン』

空中散布の状況   

一般財団法人残留農薬研究所の研究によれば、平成28年度の無人ヘリコプター防除(水稲)における農薬の使用面積は、

  • バリダマイシン:125(千ha)
  • カスガマイシン:102(千ha)

となっており、これは殺菌剤全体の第4位、5位の立場を占めています。

空中散布可能な商品:バリダマイシン

2019年1月現在、主な空中散布可能なバリダマイシンを主成分にする薬剤には以下が挙げられます。

  • バリダシンエアー
  • カスミンバリダシン液剤
  • ダブルカットバリダフロアブル
  • ビームバリダゾル
  • ブラシンバリダゾル
  • ノンブラスバリダフロアブル

バリダシンエアー                   

成分:バリダマイシン 5.0%

紋枯病の進展を阻止する効果が高く、持続性もあるバリダシンを航空防除専用剤として製剤したものです。

バリダシンの最も効果的な散布時期である紋枯病の防除の適期は穂ばらみ期頃です。病斑が株元から葉鞘へ上がり始めるため、その後さらに病気の進展が場合には程度に応じて散布を追加します。

ビームバリダゾル

成分:トリシクラゾール 20.0%、バリダマイシン 5.0%

長期間の残効を有する浸透持続型いもち剤『ビーム』を混合させています。
いもち病・紋枯病の同時防除剤として安定した効果を示します。

ブラシンバリダゾル

成分:バリダマイシン 5.0%、フェリムゾン 20.0%、フサライド 15.0%

『ブラシンゾル』は、いもち病の予防効果に定評があるフサライドと、いもち病の治療効果に優れるフェリムゾンの混合剤です。予防・治療の効果を兼ね備え、散布適期幅の広い航空防除専用剤として高い知名度を誇ります。

それに加えて、紋枯病に対して進展阻止力を有するバリダマイシンを混合した剤になります。

ノンブラスバリダフロアブル                   

成分:トリシクラゾール 8.0%、バリダマイシン 5.0%、フェリムゾン 15.0%

ノンブラスはいもち病に、バリダシンは紋枯病にそれぞれ優れた効果を示します。それゆえ、ノンブラスバリダフロアブルは、、いもち病・紋枯病の同時防除が可能になります。

空中散布可能な商品:カスガマイシン

2019年1月現在、主な空中散布可能なカスミンを有効成分にする薬剤には以下が挙げられます。

  • カスミン液剤
  • ダブルカットフロアブル
  • カスミンバリダシン液剤
  • ダブルカットバリダフロアブル

カスミン液剤

成分:カスガマシン一塩酸塩 2.3%(カスガマシンとして 2.0%)

稲体への浸透性にすぐれており、いもち病に対して治療効果がある。
効果の発現が早く、散布後の降雨の影響も少ない。

カスミンバリダシン液剤

成分:カスガマシン一塩酸塩 2.3%、バリダマイシン 4.0%

いもち病に有効なカスガマイシンと、紋枯病に対し病勢進展阻止効果の高いバリダマイシンを配合した、いもち病・紋枯病同時防除剤。
取扱メーカーは北興化学です。

ダブルカットフロアブル                   

成分:カスガマシン一塩酸塩 1.37%、トリシクラゾール 8.0%

治療効果の優れるカスガマイシンと、予防効果と二次感染阻止効果を発揮するトリシクラゾールの混合剤。いもち病菌の生活環のほとんどに作用し、いもち病を的確に防除し、残効性にも優れる。
各々の有効成分は浸透移行性を有しており、耐雨性にも優れる。

薬品使用上の備考

総じて人畜毒性、魚毒性が低く、安心して使用できます。
また、基本はカビ由来の病原菌に対して抗生物質として効力を発揮するので、多種多様な野菜等にも本来カスガマイシンは効力があります。

例えば、だいず、ばれいしょ、きゅうり、きゃべつ、だいこん、はくさい、たまねぎ、にら、にんにく、レタスといった野菜からかんきつやもも、日本芝といった幅広い植物に効果があります。

しかしながら、現在カスガマイシンの散布が空中散布用途の薬剤として認可されている薬剤は、主に水稲に用途が狭められています。

適用病害虫および使用方法

*『産業用無人航空機用農薬』一般社団法人 農林水産航空協会ページより抜粋

バリダシンエアー

作物名 適用病害名 希釈倍数 散布液量
(ml/10a)
使用時期
紋枯病8倍800収穫14日前まで

ビームバリダゾル

作物名 適用病害名 希釈倍数 散布液量
(ml/10a)
使用時期
いもち病
紋枯病
8倍800収穫14日前まで

ブラシンバリダゾル

作物名 適用病害名 希釈倍数 散布液量
(ml/10a)
使用時期 本剤のみを使用する場合の使用回数
いもち病
紋枯病
8倍800収穫14日前まで2回以内

ノンブラスバリダフロアブル

作物名 適用病害虫名 希釈倍数 10a当り散布液量 使用時期 本剤の使用回数
いもち病
紋枯病
8倍800ml収穫14日前まで2回以内

カスミン液剤

作物名 適用病害名 希釈倍数 散布液量
(ml/10a)
使用時期 本剤の使用回数
いもち病8倍800穂揃期まで2回以内

カスミンバリダシン液剤

作物名 適用病害名 希釈倍数 散布液量
(ml/10a)
使用時期 本剤のみを使用する場合の使用回数
いもち病
紋枯病
8倍800穂揃期まで2回以内

ダブルカットフロアブル

作物名 適用病害名 希釈倍数 散布液量
(ml/10a)
使用時期 本剤の使用回数
いもち病8倍800穂揃期まで2回以内

参考:
産業用無人航空機用農薬:一般社団法人 農林水産航空協会
農薬の大気経由による飛散リスク評価・管理対策最終報告書:一般財団法人残留農薬研究
図解でよくわかる農薬のきほん:㈱誠文堂新光社
主な水稲殺菌成分の特性一覧:農業恊同組合新聞
カスミン粒剤:北興化学工業株式会社
バリダシン液剤5:GreenJapan